平成30年度卒業証書授与式【式辞】

式辞
正門を入るとすぐその横に、ソメイヨシノの木があります。その枝の大きくなりつつある冬芽を見ると、確かな春の訪れを感じることができます。ただいま卒業証書を授与いたしました273名の皆さん、「卒業おめでとうございます」。さて、先週の月曜日、iPS細胞を使って脊髄損傷を治療する臨床研究が慶應義塾大学で始まるというニュースが流れました。脊髄損傷は、ケガや事故などで脊髄が傷つくことで手足のまひなどが起こってしまいます。現在の医療では脊髄を修復することはできません 今回、iPS細胞から神経のもとになる細胞をつくり、4人の患者に移植して脊髄を再生することに挑戦すると言うことです。このiPS細胞を世界で初めてつくったのは、京都大学教授の山中伸弥先生です。国内では、すでにiPS細胞を使って目の網膜や心臓 血小板などを再生する臨床研究が行われているので、山中教授の言動はテレビや新聞でたびたび報道されます。その中で、期待感を抱くことができない山中教授の発言を、私は今まで一度も聞いたことがありません。語り口は穏やかですが、発言内容には高い目標、意欲的な姿勢が強く感じられます。だからこそ山中教授のもとには多くの共同研究者が集まるとともに、世界中至る所でiPS細胞による再生医療の研究が行われているのだろうと思います。私はこの昭和37年生まれの山中教授に、青春を感じます。青春と言えば、高校生や20代の若者を指す言葉として思われがちですが、アメリカの詩人サムエル・ウルマンは次のように言っています。

青春とは、人生のある時期ではなく、心の持ち方を言う。

つまり、青春に年齢は関係ない。どのような心を持っているか、それ次第だということです。私が56歳の山中教授に青春 を感じるのは、病気やケガで苦しんでいる人々の役に立つ仕事がしたいという情熱、意志、創造力が言動にあふれているからだと思います。ウルマンはこうも言っています。

人は信念と共に若く、疑惑と共に老ゆる。
人は自信と共に若く、恐怖と共に老ゆる。
希望ある限り若く、失望と共に老い朽ちる。

卒業式に臨んでいる今の皆さんには、進学や就職後の自分に対する期待感や希望がきっとあると思います。まさに、青春そのものです。これからの長い人生、身体も心も変化しながら、山あり谷あり。大きな節目は、いくつかあるでしょう。しかしそういった中でも、ぜひ今後も、何歳になっても、信念や自信を持って生きることで希望を生み出し、山中教授のように周りの人まで青春を感じるような人生を歩んでいってほしいと期待します。最後に、宇和島東高等学校では、これまで皆さんを含めて3万3千人を超える高校生が学び、すばらしい伝統と校風を築き上げてきました。宇和島東高等学校の伝統や校風は、ここで学んだ皆さんの心の中に息づき、これからの皆さんの生活や言動の中で全人格的ににじみ出てくると思います。そのことを十分に自覚し、宇和島東高等学校卒業生であるという誇りを、皆さんがより高めてくれるよう期待します。四国中央市で育ち学んだ私は、高校卒業後ほとんど故郷で過ごしていませんが、心の隅には母校を思う気持ちが常にあります。私にとってそうであるように、宇和島東高等学校は、いつまでも皆さんの心のふるさとです。末永く母校を愛し、後輩たちを温かい目で見守ってもらえれば幸いです。

平成31年3月1日
愛媛県立宇和島東高等学校長 野村和弘