第Ⅲ期SSHにおける学校設定科目を核にした課題研究指導方法の改善 

 第Ⅱ期における課題研究の指導に関する課題を解決するために、第Ⅲ期からは、理数科、普通科、商業科の生徒が課題研究を始める前に、探究活動への理解を深め、多面的思考力を育成するため地域課題探究プログラム「Regional Future Design」を新たに開発し、南海トラフ地震事前復興デザイン探究(東京大学、愛媛大学等と連携)、地域課題解決ロボットアイデア探究(THK株式会社と連携)、RESAS等を活用した地域課題解決データサイエンス探究に取り組ませる。
 その後、研究テーマ創出、探究活動、論文作成に時間を確保し、ルーブリック評価で取組の改善を重ねながら、3年間継続して課題研究を行うことで内容が深まり研究の質を高めることができる。また、滋賀大学データサイエンス学部、愛媛大学データサイエンスセンターと連携し、データサイエンスの手法を取り入れ、データの重要性への理解や研究方法の創意工夫を行い、論理的で説得力のある研究ができるように指導していく。このような方法で課題研究を生徒に取り組ませることで、新しい価値を創生するために必要な幅広い視野や多角的なものの考え方、柔軟な発想力、論理的思考力を養い、教科等横断的で文系、理系の枠を越えた人材を育成していく。

 

STREAM型課題研究

 全生徒が3年間継続して取り組む地域課題等に関する課題研究について、大学、研究機関、企業等と連携した地域課題探究プログラム等の導入や研究室と連携した指導支援体制を構築し、課題研究の質の向上を図る。 

地域課題探究プログラム「Regional Future Design」 1年生
南海トラフ地震事前復興デザイン探究(東京大学、愛媛大学等と連携)
地域課題解決ロボットアイデア探究(THK株式会社と連携)
RESAS等を活用した地域課題解決データサイエンス探究 
  滋賀大学データサイエンス学部、愛媛大学データサイエンスセンターと連携

1年生1学期に、上記の地域課題探究プログラム「Regional Future Design」を実施し探究活動への理解を深め、多面的思考力を育成した後、各グループで研究テーマ創出、探究活動、論文作成に時間を確保し、ルーブリック評価で取組の改善を重ねながら、下記の学校設定科目で3年間継続した課題研究を行う


学校設定科目で3年間継続した課題研究

①学校設定科目「STREAM探究基礎」      1年理数科・普通科
②学校設定科目「STREAM探究Ⅰ」       2年理数科・普通科理系
③学校設定科目「STREAM探究Ⅱ」       3年理数科・普通科理系
④学校設定科目「グローカル探究Ⅰ(GL探究Ⅰ)  2年普通科文系
⑤学校設定科目「グローカル探究Ⅱ(GL探究Ⅱ)  3年普通科文系
⑥学校設定科目「地域探究」            1・2・3年商業科

kadai

学校設定科目「STREAM探究応用」 ロボット等の先端科学技術に関する探究活動
・AIやIoTによる植物工場探究(愛媛大学農学部と連携)
・自動収穫ロボット探究(株式会社ディースピリットと連携)
・ロボットプログラミング探究
・インボリュート曲線探究(歯車探究)
・STREAMアイデア創生探究
・オールイングリッシュによる先端防災工学探究 

 

第Ⅱ期SSH学校設定科目を核にした課題研究指導方法の改善 

《主な学校設定科目等》
◆学校設定科目「リージョナルサイエンスⅠ(RSⅠ)」
 第1学年理数科・普通科生徒を対象に、木曜日の6、7限目に2単位で実施する。その目標は、地域教材を生かした研究テーマを設定し、観察・実験、フィールドワークなど、主体的・体験的な学習活動を通してより深く探究することで、科学的探究心や郷土を愛する豊かな心を育むこと、また、その成果として地域へ情報を発信し、地域社会に貢献する態度を身に付けさせることとする。
◆学校設定科目「リージョナルサイエンスⅡ(RSⅡ)」
 第2学年理数科・普通科理系を対象に、火曜日の6、7限目に2単位で実施する。その目標は、「RSⅠ」と同じく、「RSⅠ」で研究した内容を発展させ、科学的に深く研究することで、科学的探究能力、即ち、技能並びに科学的思考力、判断力及び表現力を身につけさせることと強調する。
◆学校設定科目「リージョナルサイエンス探究Ⅰ(RS探究Ⅰ)」
 第2学年理数科を対象に、水曜日の7限目に1単位で実施する。その目標は、生命倫理や研究倫理、発展的な英語・数学の知識、自然や科学技術に関する知識や原理・法則の理解を深めるとともに、探究心、思考力、創造力の育成を図り、将来科学者や医療従事者として地域社会や国際社会に貢献する人材の育成に資することとする。
◆学校設定科目「リージョナルサイエンス探究Ⅱ(RS探究Ⅱ)」
 第3学年理数科を対象に、月曜日の7限目に1単位で実施する。その目標は、我が国の科学技術を担う人材として、学問分野に対する高い専門性と新しいことに意欲的に取り組む姿勢、そしてプレゼンテーション能力と質疑応答に対応する力が求められる。高校での英語・数学・理科等の学習内容を発展させ、それらの能力の基礎を身につけさせることとする。
◆総合的な探究の時間「リージョナルリサーチ(RR)」
 第2学年普通科を対象に、水曜日の7限目に1単位で実施する。その目標は、人文・社会科学に関する課題研究にも求められる、科学的探究能力を育成しながら、コミュニケーション能力、地域貢献力の育成を図るとする。その内容は、昨年度の「RSⅠ」で取り組んだ課題研究を継続させるなど、追加の調査や実験・観察等を行って論文にまとめさせ、3学期に報告会を開催することとする。 

◆課題研究の質の向上に向けた取組(改善策)

ア 課題研究における教科横断的な指導の実現[改善策1]
 理数以外の教員のスキルアップを目指し、課題研究の指導経験の浅い理科・数学以外の教員(主担当者)と理科・数学教員(助言者)によるチーム・ティーチングの指導形態を採用した。「RSⅠ」「RSⅡ」「RR」のそれぞれに、責任者(SSH推進課課員)を置き、適時、活動内容や指導法等に関する指示を与える。他の教員は見通しを持って指導にあたることができる。教員どうしは自由に意見交換を行い、補い合って進めていく雰囲気が定着している。チームワークを基盤にして課題研究の指導力向上につなげていく。

イ 宇東サイエンスメンター制度を利用した、テーマ検討会及び中間発表会の開催
 テーマ検討会、中間発表会を開くにあたり、愛媛大学教育学部大学院生等をメンターとして参加を依頼した(宇東サイエンスメンター制度の活用)。
 テーマ検討会、中間発表会の概要
 6月10日(木)「RSⅠ」
 テーマ検討会 助言者 愛媛大学教育学部大学院生等6名(オンライン参加)    
 参加者 第1学年理数科・普通科生徒161名(33班)、担当教員18名
 活動形態 理科の各実験室と愛媛大学教育学部をオンラインでつなぎ、課題研究のテーマ、目的、方法等について助言を受ける。予め提出した質問に対する大学院生等からの回答を受けて対話する。
 6月8日(火) 「RSⅡ」
 テーマ検討会 助言者 愛媛大学教育学部大学院生5名(オンライン参加)
 参加者 第2学年理数科・普通科理系生徒81名(18班)、担当教員12名
 活動形態 理科の各実験室と愛媛大学教育学部をオンラインでつなぎ、課題研究のテーマ、目的、方法等について助言を受ける。予め提出した質問に対する大学院生からの回答を受けて対話する。

◆愛媛大学学生を講師とした「研究テーマ検討会」

  10月28日(木) 「RSⅠ」
 中間発表会 助言者 愛媛県総合教育センター指導主事2名(生物、地学)、愛媛大学教育学部教授1名(物理)及び大学院生等6名
 参加者 第1学年理数科・普通科生徒161名(33班)、担当教員18名
活動形態 講座ごとに分かれ、体育館(基礎理工講座)、卓球場(生命環境講座)、武道場(総合科学講座)でポスター発表を行う。それぞれの講座に、指導主事または大学教員1名、大学院生等2名が助言者として参加し、各班は6ピリオドのうち2回の発表を通す中で質問や助言を受ける。同時に、本校教員も含めた助言者はルーブリック評価も行う。 
 11月18日(木) 「RSⅡ」
 中間発表会
 第2回運営指導委員会参観授業 助言者 運営指導委員11名、愛媛県教育委員会高校教育課指導主事2名(数学、化学)
 参加者 第2学年理数科・普通科理系生徒81名(18班)、校長・教頭を含む担当教員15名
 活動形態 卓球場でポスター発表を行う。運営指導委員から質問や助言を受ける。3ピリオドを設定し、各班は担当する1ピリオドの中で2回以上は発表を繰り返し、質問や助言を受ける。それ以外のピリオドでは、生徒・教員も含めた助言者はルーブリック評価も行う。

ウ 大学や研究機関等からメール等を活用してアドバイスを受ける体制の充実[改善策2]
 オンライン(Zoom Meeting)による愛媛大学・愛媛県農林水産研究所・宇和島東高等学校合同委員会では、個別相談の形態(ブレイクアウトルーム機能の利用)で、「RSⅡ」における課題研究の指導について多くの時間を当てた。詳細な助言を受けたり、専門性のある大学教員を紹介されたりするなど、その個別相談が、愛媛大学の教員から指導助言を継続的に、また、適時、受けられる契機となっている。その後、あくまで担当教員が指導役の主体であると認識したうえで、愛媛大学だけに限らず、専門家とのつながりを生かし、メールやオンラインを利用して、課題研究の指導に関する助言を得るためのオンライン相談が次々と自発的に実施されている。

エ ICT機器の効果的な活用の促進[改善策3]
 1学期、「RSⅡ」で課題研究に取り組む生徒を対象に、統計処理に関する出張講義「科学実験入門」(6月22日(火)6、7限目実施)を実施した。
 【物理領域】「放射性崩壊に伴う統計誤差」  愛媛大学学術支援センター 助教 岩崎 智之 氏
 【生物領域】「生物的領域の研究における統計処理」  愛媛大学教育学部 准教授 向 平和 氏
 観察・実験で得られるデータをどう分析するかについて学び、標準偏差や標準誤差、検定等の知識理解を深めた。 
 その技能は、課題研究の成果に生かされ、課題研究の質を向上させる効果をもたらしている。
同じく、「RSⅠ」の生徒を対象に、Excelの使い方について、商業科教員による情報講座を実施した。

 課題研究において、先行研究の調査を含めた、研究テーマの設定が極めて重要である。生徒は、過年度の「生徒課題研究論文集」の冊子を参考にする。科学系コンテスト等への参加・応募・出品や受賞について、データベース化を図り、更新も行っている。過去の論文集を電子データとして、課題研究の先行研究の調査に活用し、キーワード検索を可能にすれば、その効果は大きいと期待できる。
 本年度、課題研究に取り組むうえで、ICT機器の活用という視点において、最も効果があったのは、県立学校全体で生徒を対象に「一人一台端末」と称し、ICT機器の整備が進んだことである。実際、ロイロノートやZoom Meeting等を使ったオンラインアプリケーションの利用が可能となり、意見交換・情報共有が容易にできる環境が整った。特に、全教職員・全生徒に対してMicrosoft Office365のアカウントの取得・配布が行われ、クラウド等の利用頻度は飛躍的に高まった。例えば、論文やポスター、スライドの作成作業において、共同編集が可能になった。また、Google Forms等を利用することにより、アンケート調査に係る配布・回答・収集・分析の作業が格段に効率良く行えるようになった。ICT機器の効果的な活用が、生徒の学習活動に関する自己評価、教育プログラムの効果検証、SSH事業の検証について、多方面で進化を遂げている。

オ 宇東サイエンスメンター制度[新規策1]
 卒業生に課題研究の助言者(メンター)として協力を依頼することについて検討してきたが、愛媛大学教育学部の向平和准教授に相談し、複数名の大学院生等の参加が実現した。理科教育を専攻する大学院生側にも、課題研究の質を向上させるねらいの本校側にも、リアルタイムにオンラインでつなぐメリットは双方にある。また、今後も宇東サイエンスメンター制度としての関係が続くのであれば、大学院生からの助言を大切な情報として蓄積し、生徒が陥りやすい課題の洗い出しに利用するとよいと考える。
 今後、卒業生メンターリストを活用するなどし、卒業生が課題研究の助言に協力しやすい状況について聞き取りを行い、リアルタイムでないかもしれないが、課題研究の指導にあたり、単発ではなく継続的な関係を維持できるよう、その連携のしかたを模索する。 


カ 第2学年普通科文系2クラスを対象とした課題研究「RR」の実施[新規策2]
 第2学年普通科文系の生徒約80名を、5名ずつ16班に分けて、8名の教員が担当する。本年度、学年主任が「RR」責任者を務め、国語、地歴公民、数学、英語、家庭から1名ずつ、教員6名が2班ずつ、そして、理科の教員4名が1班ずつを担当する。地域の環境や郷土の歴史、地元の食文化、また、身近な事象に対して生じた疑問の解決に取り組んでいる。地元企業への訪問や地域の環境や歴史等の調査、地域の中学生へのアンケート調査などを行い、主体的に活動している。観察・実験やアンケート調査を通して、得られたデータを整理する力や物事を系統立てて思考する力、そして、それらを簡潔にまとめて表現する力を高めることに視点を置いている。特に、プレゼンテーション能力の向上に重点を置き、指導に取り組んでいく。



キ 課題研究指導力向上研修会の実施[新規策3]
 課題研究の指導に関する研修会(「RSⅠ」担当教員5名、10月28日(木)放課後実施)
 愛媛県総合教育センター  室長 真鍋 昌嗣 氏  指導主事 都築 克征 氏
「RSⅠ」課題研究中間発表会の後、本校教員から課題研究の指導について指導主事に質問する形式で進めた。研究内容を伝わりやすくする目的で、効果的なポスターの作成のしかたについてのレクチャーを受けた。タイトル等を最上段に配し、その下の左半分には主に仮説を、右半分には結果をそれぞれ示すと良いらしい。一般的な人は、「どのような仮説を立てて、どのような結果が生まれたか」をまず知り、そこに興味が持てば、更に下へ目を移し、実験方法やデータ等の内容を見るらしい。ポスターのレイアウトを一つとっても奥が深い。今後、「サイエンス・コミュニケーション」「効果的なポスターの作成」のような、生徒に研究内容をうまくアウトプットするスキルを養うために新たな方策を講じてもよいと考える。

【学校設定科目RS(リージョナルサイエンス)年間計画】